悪夢のように見る夢があります。
それは、芝居の本番当日の夢なのですが、
役者が台本のセリフをまだほとんど憶えていない状態で、客入りを迎えているのです。
私は、「これじゃあ作品として観てもらえないな、なんとか見栄えよくゴマカセないだろうか」、そんなことを考えています。そんな夢を、ほとんど8年間にわたって、定期的に見るのです。現実では芝居からはとっくに離れているというのに。
夢が覚めると、安心と共に、きまって脱力感を感じます。
たしかに本番当日にセリフが入っていないのは悪夢なのですが、
それ以上に、夢から覚めたあとの、「もう自分は芝居をつくる環境にはいないんだ」という現実に面つきあわせたことによる脱力感です。
たとえ、どんなに困った状況にあっても、芝居に関わっている最中は、やはり、「充実して」いたのです。
ゆえに、この場合、悪夢とは、むしろ、夢から覚めたあとの、充実とは正反対の、いつまでも続くかのようなこの日常のことを指すのかも知れません。
もう芝居から離れて、何年経つだろうか、と数えてみて、愕然とします。自分ではほんの3、4年のつもりでいたのが、あと一年もすれば10年にもなるのです。
私が手がけたどの作品も、それに取り組んでいた時というのは、まるで昨日のことのように、眼前に記憶が蘇ります。当時の映像をみると、なおさら、記憶は生々しく蘇り、清算された過去どころか、いまもなお清算されずに残留しつづける怨霊のように、私にとりついて離れないのを感じます。
今回、ホームページをつくるにあたり、
誰が読むともしれない雑記めいたものを書いたり、過去の作品の片鱗だけでも記録として残すことで、少しでも、自分にとりついた怨霊を祓うことができれば、と思っています。
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