1
脳の地表を蟻んこほどのものが
ちろちろ歩き回っている
こいつらは
わたくしの脳細胞を少しずつ
食べているのだ
くすぐったい
吐き出すみたいに叫びたくなって
アタマをゲンコツで
殴りつけて正気を保つ
2
「自分をもっと憐れみなさい
わがままになりなさい
子供にかえりなさい
甘ったれになりなさい
演じるのはおよしなさい」
3
彼は思った
あそこやそこにいる人々は
つまり自分をのぞいた全ての人間は
実に平然と生きているようじゃないか
自分はぐらぐらした虫歯のように
ただ生きているだけで莫大なチカラを要し
くたくたに疲れ果てているのに
(人ノ迷惑ニハ ナラヌヨウ)
4
罰を受けるのは
どこかで罪を犯したからです
脳細胞が雑音で溢れかえっている
そのひとつひとつの音響
「命がほしいかくれてやろ
さっさとどっかに連れてって」
最大の罪は
世界を愛さないこと
ヒトを愛さないこと
生きていることに
感謝しないこと
5
脳の表面を蟻んこほどのものが
ちろちろ這い回っている
小さな噛み跡がうずいてやまぬ
アタマをゲンコツで殴って
正気を取り戻す
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