脳の地表を蟻んこほどのものが

ちろちろ歩き回っている

こいつらは

わたくしの脳細胞を少しずつ

食べているのだ

くすぐったい

吐き出すみたいに叫びたくなって

アタマをゲンコツで

殴りつけて正気を保つ

 

「自分をもっと憐れみなさい

わがままになりなさい

子供にかえりなさい

甘ったれになりなさい

演じるのはおよしなさい」

 

彼は思った

あそこやそこにいる人々は

つまり自分をのぞいた全ての人間は

実に平然と生きているようじゃないか

自分はぐらぐらした虫歯のように

ただ生きているだけで莫大なチカラを要し

くたくたに疲れ果てているのに

(人ノ迷惑ニハ ナラヌヨウ)


罰を受けるのは

どこかで罪を犯したからです


脳細胞が雑音で溢れかえっている

そのひとつひとつの音響

「命がほしいかくれてやろ

さっさとどっかに連れてって」


最大の罪は

世界を愛さないこと

ヒトを愛さないこと

生きていることに

感謝しないこと

 

脳の表面を蟻んこほどのものが

ちろちろ這い回っている

小さな噛み跡がうずいてやまぬ

アタマをゲンコツで殴って

正気を取り戻す