イカルスの飛翔
1997.8.20~22 於:梅が丘BOX
作・演出 十六夜ひばく
照明 吉島大輔
音響 蓮沼寿恵
衣装メイク 篠原志奈
出演
矢谷真樹
真名子美佳
芝田卓也
竹内秀雄
有山智紀
篠原志奈
大平竜之介
阿部真里子
加藤亜希子
山本千鶴子
葉田野絵弥
カワサキの空は今日も晴れている。
快晴の下、築1年2ヵ月のベランダには今日も健康的に真っ白なシャツがひるがえっているのだ。
その家には、かつて学生運動で同志だった夫婦と、自閉症の長男、そして浪人中の次男がいる。かつての闘争の記憶も遠く定かではない日常の中で、毎日の些事に埋もれつつ父を演じている夫と、どうしても「母」という役割を演じきれない妻。子供らは社会と上手く折り合うことができず、長男は母と近親相姦的馴れ合いに陥っており、次男は日記の中に自我を押し広げるばかりでこの世界に向き合おうとはしない。
そんなある日、若い女がビルの屋上から落下して死んだ。「闇ノ大魔王ヲ討伐スルタメニ、生マレ変ワルノダ」そのように書き残して。女と同志であった青年は、「この世界は目に見えない大魔王に支配されている。そいつが僕たちを抑圧している。でも僕たちにはそいつと戦う方法がなかった。だからアイツも飛翔していったんだ」と呟く。
戦うべき「敵」の極めて見えにくくなったこの社会の中で静かに解体してゆく家族。子供らの暴力は「大いなる敵」を見出せぬまま、最も身近なる権力=両親へと向かわざるを得ないのか。
ゲバ棒ならぬ金属バットを握るしかない「怒れる子供の世代」と家族の解体を描く旗揚げ公演。