ゲッセマネの処女
2001.3.1~3 於:Plan-B
作・演出 十六夜ひばく
音響 竹内秀雄
照明 阿部真里子
衣装メイク 篠原志奈
出演
瀬戸鳴海
葉田野絵弥
萩原聡子
岡本裕也
神田達彦
田上耕
篠原志奈
東京という街にはゴミが溢れている。
都の清掃局員はつねに汚物処理に追われ、休む暇もない。
人々は自分のポケットに「人生の切り札」を隠し持っているつもりになって、ささやかな日常生活の味気なさに耐えている。
そこには、一つの「穴」があった。
何者かに「人生の切り札」を奪われた19歳の少年は、穴を覗き込んでいた。「この向こうに俺の切り札がある」。少年は奪われた切り札を取り戻そうと、ある日、穴の向こうに旅立つ。
さて「穴」の向こうでも、同じ時、「穴」のこちら側を覗き込む少女がいた。「この向こうに兄ちゃんは失踪してしまった」。少女は突然消え去った兄の消息を探りながら、古ぼけたオルガンのキーをおさえていた。どうしても上手く音が鳴らないのである。「やっぱり兄ちゃんがいなければ」。
少年が穴を潜り抜けてこちら側へ辿り着いたとき、少女の目に少年が「兄」とうつるのは当然であった。「兄ちゃん」「俺はお前の兄貴じゃない」そんなやり取りの中、穴のこちら側とあちら側を巡って、様々な憶測が語られる。いずれも噂話の範疇を出ないが、どうやら穴のこちらもあちらも、大して変わりはなく、どうジタバタあがこうがいずれは空から一斉に落ちてくるギロチンの雨にやられて皆殺しにされる、らしい。否、よく見ると、彼らの周りは死体の山なのだ。知らないうちに、少年と少女は街の「処刑リスト」に載せられていたらしいことに気付く。
少年と少女に加え、インスピレーションを探す「自称文学者」、そして少年に思いを寄せる娼婦をまじえ、物語は彼らそれぞれの「切り札」をめぐってドタバタ劇の裡に収斂してゆく。
果たして少年が奪われた「切り札」とは?
そして街の処刑宣告から逃れる術はあるのか?
少女の処女膜が街の悪意によって破られるとき、彼女のかざすマボロシの銃口がアルチュール・ランボーの詩句にのってマボロシの火を噴く!