歌声は白く血を吐いて、
2004.11.3~5 於:中板橋新生館スタジオ
作・演出 十六夜ひばく
照明 吉岡歩
音響 小林謙介
衣装メイク 篠原志奈
出演
竹内秀雄
篠原志奈
葉田野絵弥
うめいまほ
堤 愛
今氏英翔
KENTA
細川真智子
町はどこまでも果てしがなかった。
男と女は、もう一週間も歩きづめ、自分たちのすみかを探し続けていた。
やがて砂漠の只中に蜃気楼が浮かび上がるように、彼らの眼前に「家」があらわれる。どうやら主のいなくなったらしいその家に、二人はとりあえず腰を落ち着けて休憩しようと考えた。
しかし、誰もいないはずのその「家」に郵便物が届けられ、男のことを「お父さん」と呼ぶ子供らが二階から下りてくるに至って、事態は思わぬ展開を見せる。その家にはなぜか男の「妻」がおり、なぜかふだんとかわらぬ平凡な日常を送っていたのだ。男は女とともにその「家」を脱出しようと試みる。だが、二人はそもそもそのようにして一週間前にあの「家」を出てきたばかりではなかったか。狼狽する二人のまえに、あたかもあてつけるかのように、一週間前の日付がついた新聞が届けられる・・・
「なにがあったの?この家ではいったいなにが・・?」
故郷をしのぶ放浪民の歌も聞こえない砂漠の只中で、いま、定着して「そこ」に「住み着こう」とする者と「そこ」から「離脱しよう」とする者のあいだに、ぬぐい切れぬ乖離が口を開く。